
『オン・ザ・テーブル』
若鮎 ひかり
B6版 165ページ
2024年の年明け早々恋人に振られた私が、新宿の紀伊國屋書店で手に取ったのは『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』でした。読後の衝撃から、私は作者の葉山さんと同様にTinderで日記を送り始めます。彼女と違うのは、セックスをしないという選択。
そんな日々を送る中、春の終わりに日記交換者の一人に惹かれていきます。日記上で「北斗くん」と名付けたその彼は、全てを持っている男の子でした。しかし、私は彼が望むものを与えられないと気づいてしまいます。この恋に区切りをつけて歩き出すため、日記をZINEとして残そうと決めたのが、夏の盛りでした。
今回の日記は、前作『セックス・ソバキュリアン』の制作を決めた直後の8月から始まります。ZINE制作で変わっていく暮らし、友人たちとの変わらない関係、息切れしながらも走り抜ける「若鮎ひかり」としての私。その合間を縫う、ケの食事、一人の夏休み、初めてのデモ、大晦日のドーミーイン。ゆるやかな孤独を、躓きながらも歩きこなした5か月間でした。
私は前作のあとがきで、日記を交換することを「食卓」と表現しました。誰とテーブルを囲むのか、そこに何を並べるのか、自問自答し続けた日々を『オン・ザ・テーブル』と名付けることにします。
(「まえがき」より)