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静かな基隆港 埠頭労働者たちの昼と夜

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『静かな基隆港』 魏明毅(著) 黒羽夏彦(翻訳) 発行: みすず書房 四六判 208ページ 心理カウンセラーの著者は、どれほど面談を重ねても年々患者が増えつづける状況に戸惑いを覚えていた。患者個人だけでなく、人々に葛藤を引き起こす社会の構造的問題に目を向ける必要があるのではないか。仕事を辞め、大学で新たに人類学を学びはじめた著者は、台湾北部の港湾都市・基隆(キールン)でフィールドワークを始める。そこは、2000年代を通じて、壮中年男性の自殺率が全国で最も高い場所だった。 この街は天然の良港といわれる基隆港を中心に発展してきた。そこでは苦力(クーリー)と呼ばれる大勢の男性肉体労働者が荷役を担い、台湾と外の世界とを結びつけていた。1972年、国際輸送のコンテナ化の趨勢に乗って基隆港がコンテナ埠頭となると、84年には世界第7位の規模を誇るまでに繁栄し、港湾労働者もまた隆盛を極めた。 一方で、港を出入りする船に合わせた不規則な労働形態は、男たちを埠頭の外の世界と隔絶し、家族や地域社会から切り離していった。また、コンテナ化に伴い荷役が機械化されたことで、かつてのような大量の人手は必要でなくなった。港湾労働それ自体の変質は、いずれ彼らが切り捨てられることを意味していた。 2009年、すでに「死港」となった基隆港を中心にさまざまな場所を行き来するなかで、著者は、港湾労働者やその家族、埠頭周辺の人々の人生が、いかにこの国際港湾の盛衰に左右されてきたかを知ることとなる。 歴史から零れ落ちた人間の生を丹念な観察によって再構成し、台湾最大の文学賞・金鼎獎を得た、読む者の心を揺さぶる「悲哀のエスノグラフィー」。 目次 プロローグ 面談室からフィールドへ 第1章 基隆の埠頭で 第2章 あの頃、海辺にいた少年と男たち 第3章 茶屋の阿姨(アーイー)たち 第4章 失格 第5章 彼らは私たちである エピローグ 無数の「清水の奥さん」と「李正徳」に宛てて 基隆港関連年表 訳者解題 著者プロフィール 魏明毅(ギメイキ)(著) 1971年、台湾生まれ。心理カウンセラー。長年にわたりソーシャルワーカーの指導に携わる。2008年、新たに人類学を学ぶため、仕事を辞め、清華大学人類学研究所へ入学。修士論文をもとに書き上げた本書で、台湾で最も栄誉ある文学賞とされる金鼎獎(第41回)、2017年台北国際ブックフェア大獎(非小説部門)を受賞。2023年には、カウンセラーとしての日々を綴った《受苦的倒影:一個苦難工作者的田野備忘錄》(台北:春山出版、2023)でOpenbook好書獎「年度生活書」を受賞した。 黒羽 夏彦(クロハ ナツヒコ)(翻訳) 1974年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2014年より台南市在住。現在、国立成功大学大学院歴史学研究科博士課程在籍。南台科技大学応用日本語学科非常勤講師。専門は台湾史。共著に『台湾を知るための72章』(赤松美和子・若松大祐編、明石書店、2022)。

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