『本当は逢いたし』
池田 澄子
発行: 日経BP 日本経済新聞出版本部
四六判 224ページ
彼の世も小春日和か
此処から彼処の人を思う。
最新句集『此処』で2020年度の読売文学賞を受賞した俳人がこの10年、3・11からコロナウイルス禍までの間に綴った60余篇を編んだ、待望のエッセイ集
タイトルは自作句「本当は逢いたし拝復蝉時雨」から。時々のくらしを営む「此処」から「彼処」にいる本当は逢いたい人たちを思い綴る。彼処にいるのは――軍医として赴いた戦地で命を奪われた父、俳句の師、つい最近亡くなった夫、そして被災地で、猛威を振るう自然災害で、先のむごたらしい戦争で命を失った人たち。楽しい旅の途次に、家事の合間に、テレビを観ている時に、想像力は自然に育まれた命そのものへと向かう。自らの思いを常に客観視しているような透徹なまなざしから生まれる文章は、各エッセイに引いた自作句、師や友や先達の句をピリオドとして、えもいわれぬ余韻を残す。
池田 澄子(イケダ スミコ)(著)
1936年、鎌倉に生まれ、新潟に育つ。30歳代の終わり近くに俳句に出会う。三橋敏雄に師事。句集に『空の庭』(現代俳句協会賞)、『いつしか人に生まれて』、『ゆく船』、『たましいの話』(宗左近俳句大賞)、『拝復』、『思ってます』他。2021年、『此処』で読売文学賞・詩歌俳句賞、俳句四季大賞。散文集に『あさがや草紙』、『休むに似たり』他。対談集に『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む』。2021年、現代俳句大賞。「トイ」「豈」所属。