『喉に棲むあるひとりの幽霊』
デーリン・ニグリオファ(著) 吉田 育未(翻訳)
発行: 作品社
四六判 296ページ
アイルランドの俊英詩人による、鮮烈な散文デビュー作。
18世紀に実在した詩人と著者自身の人生が入りまじる、新しいアイルランド文学。
「数年に一度の傑作。ジャンルや形式の明確な定義をことごとく消し去った」
《アイリッシュ・インディペンデント》
恋をした。その人は18世紀の詩人だった――。
殺害された夫の死体を発見した貴婦人アイリーン・ドブ・ニコネル(18世紀アイルランドに実在)は、その血を手ですくって飲み、深い悲しみから哀歌(クイネ)を歌った。アイリーン・ドブの詩は何世紀にもわたって旅をし、3人の子どもと夫とともに暮らす、ある母親のもとにたどり着く。家事、育児、度重なる引っ越しの両立に疲れ果てた彼女は、自身の人生と共鳴するアイリーン・ドブの世界に夢中になり、やがて彼女の日常を詩が侵食し始める――。
他者の声を解放することで自らの声を発見していく過程を描き、《ニューヨーク・タイムズ》ほか各紙で話題となった、日記、哀歌、翻訳、詩人たちの人生が混交する、異色の散文作品(オートフィクション)。
◎ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞ほか受賞
◎ラスボーンズ・フォリオ賞 最終候補
◎「18世紀にアイルランド/イギリスで書かれた最高の詩」とも称される『アート・オレイリーのための哀歌』の全編訳付き
デーリン・ニグリオファ(著)
アイルランドの詩人、著作家。アイルランド語と英語の2カ国語で執筆し、本書のほかに詩集を6冊出版している。詩集『Clasp』(2015)はアイルランド文学ルーニー賞とハートネット詩賞を受賞、アイリッシュ・タイムズ詩賞の最終選考に選出された。
吉田 育未(ヨシダ イクミ)(翻訳)
英日翻訳者。佐賀県出身。トロント大学修士。訳書に、エマ・ドナヒュー『星のせいにして』(河出書房新社)、『聖なる証』(オークラ出版)、ニナ・ラクール『イエルバブエナ』(オークラ出版)、アリス・シャートル文/ジル・マケルマリー絵「リトルブルー」シリーズ(出版ワークス)など多数。